第23章 学生編・中秋のNurseryRhymes
言いたい事を言うだけ言ってこの場を後にした朱音様。後輩達は勿論だけどワタシ達ですら、その自由奔放に言葉を無くす…けど藍音との会話である程度の事は予測出来る。多分例の裏口から別部屋に行って姫様に戻って来る、と言う事だろう。
「あ~くんって自由だね」
「実力は確かなのに全く協調性が無いのだよ…」
「アカネサンはいつもあんな感じだよ」
「ほ…本人も言ってたけどアカネさんと姫さんは犬猿の仲だから」
"僕と藍音以上に"とフォローを入れる紫音に乗らねばと思った。このままじゃ朱音様がそう言う人間だと誤解される事になる。
「そ、そうそう!別に仲が悪い訳じゃないんだけど、ちょっと馬が合わないってゆーか」
『姫とアカネはライバルだからね~』
一同「ライバル?」
そんな設定作って大丈夫かしら?
『そ!私を奪い合うライバル!でもねぇアカネってばモテるから色んな所に女がいるんだよねぇ』
「…薫くんみたいじゃのぅ」
『あんなチャラ男と一緒にしないで。ちゃんと一番は私だから』
あー…それはあながち間違ってない。あの子普段から同性人気が凄いのよねぇ…
※※※
「で?どうするの?朱音様は姫様に頼めばいいって言ってたけど」
と携帯を確認する池上先輩。朱音くんが帰って30分は経過していた。
『さっき本人映像みたいなの取り入れたいって言ったじゃん?それをしろって事だと思うよ』
「成程。じゃあ男役はワタシか紫音かしら?」
「待て。何でオレは除外されてんだ」
とすかさず突っ込みを入れる黄音くんは不機嫌そうにソファに座って脚を組む。
「藍音の絵を見てご覧なさいな。男の子のイラストは華奢だから貴方じゃ厳つ過ぎて役に当てはまらないわ」
「じゃあ僕も無理じゃない?姫さんと身長差殆ど無いし」
画面を指さす紫音くんに池上先輩は顎に手を添えながらパソコンを覗き込むと"ワタシも役不足じゃない"と納得行かない様な顔付で藍音くんを見る。
「この男の子、誰をイメージしてるのよ。そもそも歌詞も」
「確かに。結局歌詞もアイネが殆ど書いてアカネさんに修正してもらってたよね」
『………』
二人の言葉に少し押し黙る藍音くんはやがて重々しくその口を開く。