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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


「う~・・・寒い・・・」

 びゅうと吹き付ける北風に、私は身を縮めて冷え切った指先に息を吹きかけながら歩いていた。

 今は1月。
 服を何枚も着こんで、コートを来て、マフラーを巻いて。それでも、この冬の風には勝てそうにない。

「もう少しで着くよ。」

 身を縮めた私の隣。友人の中村由梨は、強く吹いた北風で靡いた髪を、掻きあげるようにして指先で梳くと、ちらりと私を見て言った。


 私達は今、母校である海常高校へと向かっている。

「鈴木先生、元気にしてるかな。」
「元気なんじゃないの?定年過ぎてまで臨時教員として教師続けてるくらいだもの。元気が有り余ってそう。」

 私の疑問に淡々と答えた由梨は、少し嬉しそうに口元を緩めていた。その『鈴木先生』と言うのは、私達が在学中に陸上部の顧問を受け持っていた先生である。見るからに頑固そうなおばあちゃんで、見た目通りとても厳しい人だった。

 そんな鈴木先生が、この春、退職をするとの噂を聞き付けた私たちは、最後に学校で先生に会いたいねと意気投合し、こうして北風が吹き荒れる道をひた進んでいるのだ。

 もう少し暖かくなってから来たかったのだけれど。春になれば、私の仕事が少し忙しくなってしまうし、由梨も課題やら論文やらに追われると言う事で、この時期の来校となってしまったのである。


「やっと着いた。」

 校門の前に立ち止まった私は、思わず声を出して大きく息をついた。相変わらず綺麗に整備された校舎と、その奥へと続く歩道。入学当初は、この道を埋め尽くすような桜が咲いていて、一人心浮かれていた記憶が蘇る。
 あれからもう、どれくらい経っただろうか・・・。

「・・・4年、だね。」
「ん?」
「卒業してから。もう4年も経つんだよ。」
「そっか。もうそんなに経ったんだね。」

 懐かしい情景に囲まれた事もあり、私達は思い出話に花を咲かせながら職員室へと向かう。今日は土曜日で、学校は休み。しかし、鈴木先生は、毎週のように補習授業を行っているらしく、土曜日は必ず校内にいるとの事。ちなみに、情報提供者は由梨の弟君だ。

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