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【黒子のバスケ】年上彼女 file1

第2章 first quarter


 北風が吹き荒れる海常高校の校門前。今日は祝日で、校内を歩く生徒の姿は見られない。ちなみに、笠松君達との邂逅を果たした数日後の事だ。
 私は大きな袋を抱え、そこに立っていた。

「・・・来ちゃったよ。」

 一人呟いて見上げた校舎は、私を嘲笑うかのように堂々と建って、此方を見下ろしている。

 一つ言っておくが、別に武内先生の言葉を真に受けた訳ではない。だから、この手にあるのはプリンではなく、大量のクッキー。
 ただ私は、もっとあの子達と仲良くしたいな、なんて。バスケ部に全く関係がない、ただのOBが、そんな事を言える立場でない事は分かっているのだけれど・・・。
 まあ、ここは『恩師』である武内先生を精一杯利用させていただく事にしよう。

 私は大きく深呼吸をしてから、その校内へと足を踏み入れた。


**


 大きな掛け声が、体育館の外にまで響いている。

 こっそりとその中をのぞいた私は、彼等の必死に練習する姿に、その気迫に押されてしまい、ここに一人で乗り込んで来た事を少々後悔していた。
 由梨を連れて来ていれば、弟君がいるから、なんて言う理由で上手く中に入れたかもしれない。高校生と仲良くしたい、と思う自分を少し恥ずかしく思い、由梨には内緒にしてきたのだけれど・・・。結果的に弟君がバスケ部にいるのだから、私の行動や真意がバレるのは時間の問題である。
 そこまで思い至って、私は大きくため息をついた。今から連絡しても来てくれるだろうか・・・。

 私が大きな紙袋を持ち直し、鞄からスマホを取り出そうとした時だった。

 「・・・っ!」

 ふと、扉近くまで転がったボールを取りにやって来たらしい笠松君と視線が合う。
 私は、あの、と声を掛けようとしたのだけれど、すぐに顔を背けられ、声を掛ける事が出来ない。ここにやって来たのが、小堀君や由孝君、もしくは由梨の弟君ならば、この差し入れを手渡すなり、中に入って良いか尋ねる事もできたのだけれど・・・。
 いやいや。それでも、ここにやって来たのが顔見知りの彼である事に感謝しなくてはいけないと思う。全く知らない人からすれば、こんな所に立っている部外者なんて、ただの不審者にしか思われないだろうから。

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