第2章 first quarter
暫く、次々に行われるミニゲームを眺めていると、唐突に武内先生が言葉を投げかけて来た。
「そう言えば、お前の働いている職場。」
「なんですか?」
「プリンが美味いらしいな。」
「急にどうしたんです。」
「次は差し入れを持って来い。」
「・・・は?」
武内先生はそれだけ言うと、顎でコートの向こう側、体育館の入り口に立っている人物を差した。由梨である。
「さっさと行け。」
「言われなくても行きますよ。ってか、プリンとか贅沢な事言ってるからそんな体になるんですよ!」
私はそう言葉を吐き捨てるようにして由梨の元へと急いだ。もちろん、途中で小堀君や由孝君に「もう帰るんですか」なんて止められたりはしたけれども。笠松君が、再びコートに立つ姿を見られただけで、私は満足だったのだ。
彼の元気な姿が見られた。その上、彼の周りにいる仲間達とも少々触れ合う事ができたし。彼等なら、私が心配する事なく、笠松君を支えてくれる。その事実を知れただけでも十二分に満足するべきだ。
そう。
もう心残りは何一つない。
なに、一つ・・・ない、はずなのだけれど・・・。