第3章 新たな対手
それに、過去を切り捨てて
五十嵐学園の教師になってからは、
生徒達からの恋文攻勢はともかく
この手の嫌がらせはほとんどなくなって
いたのだ。
「………ったく………」
丸めて、そのままゴミ箱に放り込む。
が、捨ててしまえばそれで終わりという
わけではない。
相手は、わざわざ玄関の前まで来て
新聞受けに入れていったのだから
部屋は知られてしまっている。
近所の人間かもしれない。
もしかしたら……
こうしている今も、
どこからか覗いているかも……。
慌てて窓に駆け寄って
あたりを見回すが、
不審な人影は見あたらない。
マンション前の公園で遊び回る子供達と
おしゃべりを楽しむ奥様達がいるだけだった。
その時ーーー…。
ピンポン、ピンポン、ピンポーン♪
突然鳴り響いたチャイムに
智の心臓はドックンと跳ね上がった。
「だ…誰だよ…?」
オドオドと呟きながら、
忍びの足で玄関に歩み寄ると
気配を消しながら覗き穴から外を
うかがった。
(あれ?……この子……)
知らない顔じゃないぞ
いやいや、ある意味知りすぎるほど
知ってるぞ…。
確か……
翔の所属しているサッカー部の
マネージャーだったような…。
翔以外に興味のない智は、
名前までは覚えていない。
それにしても、どうしてこの男がわざわざ
智を訪ねてきたのだろうか?
だいたいサッカー部は、
今日から合宿じゃなかったのか?
そう思いながらも、翔の知り合いなら
危険はないだろうと、ドアを開ける。
「はい…どちら様ですか?」
と、わかっているけど
一応相手に聞きだす。
「あの…突然お邪魔してすいません。
大野先生ですよね?
櫻井の高校の時の恩師の……」
「はぁ…………」
恩師って言うのかなぁ…俺は…