第2章 足並みの乱れ
だから、悲劇の主人公を演じながら
訴えるしか今の智には方法がなかった。
自分が辛いと言えば、
翔は堪えてくれるだろう。
そう仕向けるしか、
真面目で真っ直ぐすぎる翔を
抑える術がない…。
だから、智は言い続ける…
「もうイヤなんだ…
白い目で見られるのはーーーー…」
愛する男を守るために。
ただそれだれのために。
口をつぐめと…。
何も言うなと……………。
二人の将来を守るために、
貝のように口を閉ざし
世間を欺き通せと。
それが翔のためと信じて…。
翔の心にどんな思いが
渦巻いていたかなんて、智は知りもせずにいた。
その夜、二人は、擦れ違った心のまま
躰だけを何度も…
何度も貪りあった。