第1章 新たな始まり
隙間なく躰を重ね、
上も下もドップリと濡らし、
燃え上っていく恋人達。
ーーーなのに、こんな激しく
愛し合っている最中でさえ、
智の心には、決して消えない
小さな不安がある。
いつまで……?
いつまでこうしていらけるだろうか?
卒業してしまった翔に、
これから待っているのは、
男子校とはまったく違う
華やかな世界だ。
そこには翔を狙う
女達が溢れているはず。
そうして、女が近づくたびに、
学友であろうと、
サッカー部のマネージャーであろうと
燃えるような嫉妬に身を
焦がすことになるだろう。
『ゴメン……智。
俺…結婚するんだ…』
過去の男達の声が…
顔が…
浮かんでは消える。
翔は違う。
こんなに俺を求めてくれてる。
今度こそ…
今度こそ、理想の男を
見つけたんだから…。
とまるで呪文のように、
智は心で繰り返す。
それ自体が、不安の表れだと
智は気づくいていた。