第10章 落魄
俺は……
たとえ家族に……
お前に謝罪できなくても
ちゃんと自分の罪と向き合っていく……
だから……
「雅紀……あいつなら大丈夫だよ。
そんなに弱い人間じゃない。
それに支えてくれる仲間や家族がいるから……」
心からそう信じている。
自分が奪ってしまったものを取り戻すことは
できないけれど……
きっと翔ならどんな試練も乗り越えて
今まで以上の素晴らしいものが
手に入れられるはずだから……
と、…………
智は必死に納得しようとしていた。
雅紀は静かに頷く。
「智さん…………
俺も、翔先輩に関しては何にも心配なんて
していないんだよ……」
「…………ん……?」
「ねぇ……ちゃんと食べてる?」
「俺……?」
「痩せたよ……」
「そうかなぁ~?」
智は、白衣の上から自分の身体を触ってみる。
「痩せたかなぁ~?」
「うん。今の智さんならカズさんと
後ろ姿でも見分けがつくぐらい痩せちゃったよ。」
「はぁ~?お前後ろ姿だと
見分けられなかったってこと?」
「ハハハハハ……………」
しまったとばかりに、雅紀は手のひらで
口を押えた。
あれから1ヶ月、一回りも痩せてしまった智は
消え入りそうに儚くて……
雅紀を含め他の生徒達も心配していた。
「ちっとも学食に姿を見せないって
みんなウワサしているよ……」
「そうかなぁ~?
だって最近の食生活は、
前よりずっと良くなってるんだぞー
なんせカズが3~4日おきにご飯を持って
来てくれるから……」
初めての家族旅行、ついでに新婚気分を味わって
帰ってきた和也は、智と翔の身におこったことを
聞いて、青ざめていた。
『そばにいればよかった…………』
潤なんてほったらかしにして
帰ってくればよかった。