第8章 魅惑な美
こんな時でさえ雅紀は秘書に向かって
キビキビと支持を命じていく……。
そんな雅紀の声が響く中で
智は必死に痛みを堪えている翔の手を
握ることしかできなくて………。
只々翔の姿を唖然と見つめていた。
苦渋に歪む顔……
切り傷だらけの腕………………
そして………………
パックリと裂けたジーンズの膝を………
「しょ……翔……?」
そこから流れ出る血が、
見る間にコンクリートのベランダを
染めていく………………。
耳障りな音が間近で聞こえてきた……
それか、
自分の悲鳴だと気づかぬまま、
智は叫び続けていたーーーーーー。
「イヤぁぁぁぁぁーーーーーーーっ…!!!!!!!!」
薄れゆく意識の中で
翔は智の泣き顔を見ていた。
(ああ………
ごめん智……
また泣かせちゃったね………………)
そんなことを思いながらーーーーー…。
ゆっくりと瞳を閉じていった………………。