第7章 雲隠れ
誰かが邪魔をしているなんて、
やっぱり考えられないのに……
いつこうに翔から連絡が来ない。
もちろん訪ねても来ていない。
もしや、門のところで警備員に止められ
中に入ることができず、
屋敷の周りを当てもなく
うろついているかもしれないと思って
智も毎日こうやって柵の近くを
歩き回っているのに
翔の姿は影も形も見えない。
「ホントに…もう、俺の事なんて
どうでもよくなっちゃったのかなぁ…
捨てられたの…かなぁ…」
日に日に不安ばかりが募っていった。
もしかしたら、翔の言う通りやりすぎたのかも
しれない。
伊野尾は、本当に身体が弱くて…
自分の言葉でショックを受けて
身体を壊してしまったのかもしれない。
それが、サッカー部の仲間に知れ渡って
しまったら当然このと、
みんな伊野尾の味方をして
智のことを罵倒するのだろう…。
その場にいない者を悪者にすることで
一致団結するってのが
集団の心理ってヤツだ。
周りの奴らから
『そんなひどいヤツとは、関らない方がいい、
きっぱりと別れた方がいい』
と、詰め寄られれば、
いくら翔の心だって揺らぐかもしれない。
大人びたって、まだ18歳、
子供に毛が生えたようなものだろう。
俺は、こんなところで、ひたすら待っている
だけでいいんだろうか?
何もかも遅かったなんてことに
なってしまってもいいのか?
でも………
こっちから合宿所に逢いに行くことはできない。
翔の一生の夢がかかっているのに、
わざわざスキャンダルのネタにしてくださいと
男の恋人が顔を出すわけにはいかない…。
やっぱり……
待っていることしか自分にはできないのだ。
翔……
逢いたいなぁ………
智は空を見上げ涙を流していた。