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もう迷わない辿り着けるまで〔気象系BL〕

第6章 姑息な悪だくみ



ようやくここまでは理解した翔は
押し黙ったまま、

それでも一応病人あつかいをして、
抱き上げていた伊野尾をそっと布団の上に
座らせた。

そうして、カイロを拾い上げると
背後で立ちつくしている岡田に静かな口調で
問い始めた。

「岡田キャプテン、これは何の冗談ですか?」

いつもより低いトーンに、
ゾッとするほど抑揚のない声音……、
いつも偉そうな顔をして下級生に激を
飛ばしている
岡田の顔も焦りの色が浮かぶ。

どうやら計算外のマズイ展開になって
しまったと…
サッカー部のキャプテンを任されているほどの
男が気がつかないはずがない。

「いや……それは……その…だなぁ……」

「俺は、平気な顔をして人をだます人間が
この世の中で一番嫌いなんです。」

「………………。」
その言葉に、岡田が返す言葉を失ってしまう。

『不言実行』の言葉を座右の銘として
努力と忍耐の男は、練習が終わってからも
いつも黙々と夕闇に包まれたグラウンドで
仲間のために整備をしていた。

『明日も誰一人として、ケガをすることなく
練習ができるように………………』
そう願い…小石を拾っては地均しをしてきた。

誰にも、何も語らず、人に強要することなく
もちろん、感謝を求めることもない。

『いつも気持ちに寄り添い、整備してやれば、
ちゃんとそれだけのものを返してくれる、
道具も人も同じだよ。』

と、当たり前のように言ってのけた男は、
やはりどんな理由があろうと
ウソはついてはいけなかった。

「…すまない……」

思わず、平身低頭謝ってしまう岡田だが
翔の追求はそれだけですむはずがない。

「なぜ?すまないんですか?」

「それは……その…」
岡田は、チラリと伊野尾を見た………………。


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