第1章 もっと。
「ふな〜腹が減ったんだゾ!」
「そうだねグリム。今日は夕食何にする?」
「オレ様はツナ缶がいいんだゾ!」
「あ!」
「いきなりどうしたんだ?」
「忘れ物しちゃった、取ってくるからグリムは先に帰ってて?」
「ったくしょうがない奴だな〜わかったんだゾ〜」
お腹を空かせたグリムを先に返すと、来た道を戻り教室に向かった。校舎内は普段の喧騒とは変わって静かだ。殆どの生徒が部活動や寮に戻ったようで、奥の部屋からは軽音楽部の演奏する音が微かに聴こえ、グランドからは運動部の声がする。
自分の席には案の定置き忘れたテキストがありホッとした。
「監督生さん。」
廊下へ出るとジェイド先輩に声を掛けられた。
「ジェイド先輩、どうしてここ?」
「俺もいるんだけど〜」
後ろからフロイド先輩がひょっこりと顔を出した。
「こ、こんにちは…」
思わずビクッとしてしまう。
「フロイド。……教室に戻る所をお見かけしたものですから。」
「そうだったんですね、テキスト忘れてしまったので取りに来ていた所なんです。」
「そうでしたか。僕はこれから部活に行くところなんですが、部活前に貴方の顔が見れてよかったです。」
「あ、山登りに行くんですか?えっと…気をつけて行ってきてくださいね。」
精一杯の笑顔で行ってらっしゃいをするとジェイド先輩微笑んでくれた。
そう、先日ジェイド先輩に告白され、最初は戸惑ってしまったものの、お付き合いをさせてもらうことになった。…と言っても、あの時手を握って貰っただけで何の進展も無いのだけれど、ジェイド先輩は何も聞かず待ってくれている所が実に紳士的だ。
「だぁーかーら、俺もいんだけど。」
「ご、ごめんなさいっ」
フロイド先輩にも話してくれたようで、執拗に抱きついたりすることは、以前よりは減った。以前よりは。少し力を抜いてくれるようになった、かな?
「あ!小エビちゃん今からモストロラウンジに来ない?いちごのデザート食べに来てくれるんでしょ?」
「えっ、今からですか?」
「まだ開店前だけど〜小エビちゃんは特別にいいよ♡」