第9章 紺青の享楽 ~前編~ 【伊達政宗】
絶世の『美男子』の隣で、その美男子が私のために作ってくれた夕餉を食べている。
「政宗の作る料理はどれも美味しいけど、特に卵焼きは絶品だよね! ほんっと美味しいっ!」
「だろ?愛情たっぷりだからな。いっぱい食え」
そう言って整った顔をほころばせている。
がぶりと大きな口で卵焼きを食べそうになり、
はたと気づいて、皿に戻した。
一口よりももっと小さいサイズに切り直し、ちまちまと口へ運ぶ。
___政宗が一瞬、首をかしげたことには気づいていなかった。
夕餉を食べた後、、、当たり前のように私たちは愛し合った。
「愛された」という方が正しい表現かも知れない。
ただただ、、政宗の与えてくれる愛の行為に身を任せていた。
胸の奥に小さな違和感を抱えたまま。
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政宗からの猛プッシュで付き合うことになってから早1ヶ月。
信長様を始めとする武将たちも渋々ながら認めてくれた。
政宗は破天荒な性格だから、この時代の人としては愛情表現も豊かで情熱的に愛してくれている、と思う。
日本を代表するような戦国武将と恋に落ちて、
めいいっぱい愛されて…
これ以上望むものはなく幸せな日々を送っていた。
___というのは建前で…
私は今、悩んでいることがあった。
『時代の壁』というのだろうか。
この時代、女性は二歩三歩も下がって、男性に従って自我を出ないのが美徳とされているイメージがある。
私は500年後からこの時代に飛ばされて来て、そのあたりのさじ加減が全然分からなかった。
私のいた時代では女性も当たり前に仕事をし自立していて、
恋愛にも積極的だった。
いわゆる「肉食系女子」なんていうのも流行っていたし。
私の性格上、二歩も三歩も下がるのは無理……
好きな人とは肩を並べて生きていきたいし、ちゃんと愛情表現もしたい。
しかし…
秀吉さんと並んで安土きってのモテ男と付き合うようになってから「この時代の良い女」を意識しすぎてしまい、付き合う前のような自分を出せなくなってしまっていた。
しとやかに振舞おうとしても…意識しても、すぐ地が出てしまう。