第37章 純白の羨望~別館~ 【伊達政宗】SS
莉乃が平手打ちを食らわせた。
「自分なりに決着を付けに来た」と言って。
当事者でなければ、おもしれぇ!と大笑いしたことだろう。
それを見た時、まるで雷に打たれたかと思うほど震えが走った。
感動なのか、恐怖なのか、悦びなのか、分からない。
とにかく、感情が大きく揺すぶられた。
こんなことが言えるなんて、できる女なんて、見たことがない。
そして、俺にもこの一発だ。
いくら酷いことをしてしまったとはいえ、公の場で町娘が武将である俺に手を上げることは身分的に許されない。
だが伊達家より格上の織田家の姫ならば、立場的にそれもアリだ。
いつもは立場も身分も関係ないと言い張る莉乃が、こんな時ばっかり自分の身分利用しやがったな。
「彼女の気持ち」だと。 流石だ。
確かに、痛恨の一撃だった。
この日、この瞬間に、俺は初めて恋に落ちた。
莉乃は信長様の持ち物?
そんなことはどうでもいい。この俺がかっさらうまで。
安土のモテ男は返上だ。
純白の羨望 別館 __完__