第35章 千歳の誓約 前編 【織田信長】R18
身体を重ね、何度愛してると伝えても。
俺の欲を受け止め、何度愛してると伝えられても。
違う、もっと、欲しい。
何かもっと、大きな物を求めてしまう自分がいた。
だがその大きな物が何なのか分からないのだ。
ここまで己の欲する物が分からないことも、初めてだった。
そういえば、宴の席で莉乃は妙なことを言っておった。
精の付く食事のことや、子供・・・
子供、か。
今まで望んだことなど一度も無かったが、それはそのような相手がいなかったせいかもしれぬ。
『その前にお嫁さんに』と言った時には、あまりの愛らしさに宴の中止を言い渡すところだった。
莉乃のあのような顔を武将たちに見られたと思うと腹立たしい。
白無垢姿の莉乃はさぞかし美しかろう。
厳粛な神社で。
俺の隣に立つ、白無垢姿から真っ直ぐに向けられる視線。
誰の物でもない、名実ともに俺だけの妻になった瞬間。
神にではない、己自身に誓う。
貴様と一生共に過ごす、と。
頭の中にふと浮かんだその姿が消えた。
その時、心の中で何かが動いた。
ずっと空いていた隙間に、
その形にぴったり合う物が、
かちりとはまったような。
ああ、そうか。
俺は莉乃のこの先が欲しいのか。
ただの恋仲ではない、千歳の誓約を。
(後編に続く)