第32章 情愛の行方【イケ戦5周年記念】明智光秀編
「お前もいい年頃だ。慕う男がいてもおかしくない。
相手によっては、俺が協力してやれないこともないぞ?
家康のことを追ったこと、黙ってやるついでだ。
誰に惚れてるのかも言ってみろ。」
机に両肘を付き、顎を手のひらで支える。
莉乃が答えたのは・・・
「光秀さんは・・・誰だと思います?」
真っ直ぐに目線を合わされた。
その目は先ほど口付けしたせいか若干潤み熱を持ったようになっていて、艶めくその瞳から目が離せない。
嘘や偽りと言った事に無縁そうな、濁りのない眼差しが向けられ・・・
黒々とした大きな黒目に吸い込まれそうだった。
___こんな目をする娘だっただろうか?
光秀 「俺に当てろというのか」
「はい。
光秀さんは人の気持ちを読むのが上手ですし、よく見ていますから。
多分、分かると思います。」
謎かけをして、その答えを待つ小童のような表情をしている莉乃。
さぁ当ててみろと言わんばかりの煌めいた瞳をして。
光秀 「分かるわけがないだろう。
俺が何でもお見通しだと思ったら大間違いだぞ。」
そう言って指で額をこつんと突く。
残念そうに頬を膨らませる莉乃の愛らしさに、また何かしらの理由を付けて口づけしてやりたくなった。
「・・・本当に分からないんですか?」
光秀 「なんだその目は。
ああ、だから尋ねたのだ。
分かっていれば最初からこんな不毛な質問はしない」
心のどこかで俺と言ってくれれば・・・という淡い気持ちがあったが、そんな事はないと即座に打ち消した。
それこそ、不毛な期待だ。
太陽が影に惹かれるはずがないのだから。