第30章 御伽の国の姫~別館~【豊臣秀吉】R18
お開きとなった宴から私は一人自室に戻ってきた。
まだ劇の興奮が残っていて、久しぶりに飲んだワインがさらに気持ちを大きくさせている。
そして・・・今もっとも私の気持ちを高ぶらせてること。
これから彼が迎えに来てくれて、今夜は御殿でお泊まりする予定になっていた。
お泊まりセットを風呂敷に包んでいると、障子の向こうから声がかかる。
「莉乃 開けるぞ~」
そう言って部屋に入ってきたのは秀吉さん。
秀吉 「おっと、まだ西洋の「どれす」姿だったのか。
そんな格好で寒くないか?
目のやり場に困るな、それ・・・」
照れている秀吉さんのために、私はさっと着物に着替える。
「ちょっと待っててね」
「あぁ、ゆっくりでいいぞ。
そういや、お前の部屋に入るの久しぶりだな。」
今夜の宴まで劇の衣装や小道具やらを見せたくなくて、部屋には入れなかったこの一ヶ月。
何度も差し入れを持ってきてくれたものの、頑としてそれらを見せなかったし劇の内容も秘密にしていた。
「今まで部屋に通せなくてごめんね。
劇楽しんでもらえた?」
「あぁ、もちろんだ。
まぁ・・・いろいろ思うところはあったけどな。」
垂れ目が困ったようにさらに下がって、その愛らしさに頬が緩んでしまう。
「後で感想ゆっくり聞かせてね。」
そう言うと準備を終えた私たちは城を出て、秀吉さんの御殿へ向かった。
道中、そっと差し出された手を握る。
当たり前に見えるこの行為も、実はまだ内心ドキドキしてしまう・・・
恋仲となってまだ2ヶ月。
まるで兄と妹のような関係の方が長かったから『恋人』というとまだ照れくさい。
憧れだったこの手を、当たり前に握れる今が夢のようだった。
秀吉 「疲れただろ? 湯殿の用意させといたから。
御殿に着いたらまず風呂だ。」
「はーい」
優しくて気遣いやさんで、かっこよくて。
秀吉さん、大好き。
横顔をチラ見しながらホクホクしていたのは御殿に着くまで。
・・・問題は、その風呂だった。