第28章 御伽の国の姫~別館~【上杉謙信】R18
そして、安土を発つ日。
迎えに来てくれた謙信様と佐助君に、何人ものお供の方。
そして用意して下さった品々を携え、私は城の城門で信長様を始め武将たちの見送りを受けていた。
暖かな涙と笑顔でそれぞれと別れの言葉を交わした後、いよいよ出発という時。
謙信様の馬に同乗しようとした途端、
「ちょっとまって」と家康に呼び止められ、腕を引かれたと思ったら、口づけされた。
突然のことに驚く私と見ていた武将たち。
「このくらいもらってもいいよね。じゃ、元気で。」
そう言うと背を向けて行ってしまった。
秀吉 「家康、あいつ・・・ 里帰り忘れるなよ!」
信長 「くっっ、莉乃たまには文でも書いてやれ。
息災でな」
政宗 「俺の作る飯が恋しくなったらいつでも戻ってこいよ、飯だけじゃなく俺のこともな」
三成 「莉乃様・・・寂しくなります。
早くお戻り下さいね・・・」
光秀 「そちらの方面に出向く時にはお前の呆けた顔を見に寄ってやろう。達者でな」
謙信 「では、出発する」
そう言って皆に会釈すると、馬を歩かせ始めた。
「みなさん、どうかお元気で!!文、書きますから!!」
そういって精一杯手を振りながら笑顔を向けた。
どんどん小さくなる武将たちと城。
私は故郷を後にした。
背中にいる愛する彼と新しい生活を始めるために。
謙信 「後悔はないか?今ならまだ__」
少しの不安が声ににじむ謙信様の方へと首を回し、言いかけた言葉を口づけで止める。
「謙信様、愛しています。
ずっとおそばにいさせてくださいね。」
謙信 「あぁ。俺も愛している」
佐助 「お取り込み中すみません。
そろそろ速度をあげてもいいでしょうか?」
私たちは笑顔を交わしながら、新しい未来へ向かって馬を駆けさせた。
御伽の国の姫~別館~ __完__