第19章 傾国の紅粉 【徳川家康 編】 R18
俺は怒っていた。猛烈に。
そして、その気持ちを携えたまま、莉乃の部屋に向かっている。
___今夜は莉乃の誕生祝いとあって、それは華やかに開催された宴だった。
酒も食事もふんだんに用意され、それを見ただけでも信長様のお気に入りだということが分かるほどに。
ついでに、政宗さんにも、か。
恋仲の莉乃の誕生日ということもあり、俺も結構飲んでしまった。
誕生日だからと他の武将たちに構われまくっていた姿をあまり見たくなかったせいもある。
皆…誕生日にかこつけなくても、普段から莉乃を構いまくるくせに。
信長様を始め、武将達お気に入りの莉乃と俺が恋仲になるなんて、思ってもみなかった。
俺と莉乃の性格は真反対だ。
素直じゃない俺が、バカみたいに素直な莉乃に好かれるなんて。
しかも、掛け値なしに正統派美人の莉乃に、だ。
三成の言葉を借りれば、「日ノ本一の麗しいお姫様」だと。
本人には言わないが、俺もそう思っている。
恋仲なんて・・・今でも何かの間違いじゃないかと思う時がある。
想いをかわしてから三月(みつき)。
仕事の合間に逢瀬をしたり、遠乗りに出かけたり。
城下に新しい茶屋ができたと聞けば連れて行き、幸せそうな顔で団子を頬張る莉乃を「あんたもよく食べるね」と呆れ顔で見ているのが幸せだった。
俺の御殿で一緒に薬作りをしながら、気がついたら夜がふけていた、なんてことも多々ある。
俺は俺なりに…
莉乃との関係を大事に育んでいたと思っていた。
実は・・・
誕生日の贈り物として、ある計画を立てていた。
驚かせて、喜ばせて、それから俺たちは…
そう思っていたのに。
宴の後、莉乃を湯浴みに行かせた。
少しは頭を冷やせ、という意味を持って。
そして俺自身も、このやり場のない気持ちを落ち着かせるために、湯浴みしてから部屋に行くと告げた。
が、気持ちは少しも落ち着かないどころか、莉乃に言ってやる文句で頭の中がいっぱいだった。