第16章 傾国の紅粉 ~基本ルート~
「はい、信長様。
私はこのように宴を開いていただいただけでも、本当に…
幸せです」
酔ってふにゃふにゃになりながらも、なんとか答える。
「そうは言ってもなぁ、何か無いのか??」
秀吉さんが思案してくれている。
「遠慮しなくていいんだぞ、
天下の信長様ならどんな物でも手に入るんだからな」
政宗はそう言うけれど…
「莉乃様はご自身で着物も縫えますしね…」
「莉乃は物欲より食欲ではないのか?」
光秀さんからは相変わらず意地悪発言が出たけれど、顔は何かを探しているような表情だった。
酔った私の口をついて出てしまった本音が…
この後、波乱を巻き起こしてしまう。
「それに…私の欲しいものは『物』じゃないですし…」
「物ではない、と…?
貴様の希望を何でも命じてみよ。聞き入れてやる。
皆の者も分かったか?」
もう、頭の中はふわふわで、意識の境目をうろうろとしていた。
「命じていいんですか!?信長様みたい。
それでは…何でも、私の言うこと聞いてくれちゃうんですね」
楽しそうに繕って言ってみるも…
私が本当に欲しいのは、私が彼から愛されていると実感する事だ。
中途半端な思わせぶりなんかじゃなく。
おきてきぼりにされた私の熱を、高まらせたままにしないで欲しい。
「莉乃が命じることなんて大した内容ないでしょ、どうせ」
「どうせ??」
酔って気持ちが敏感になっていた私には、家康のちょっと小馬鹿にした発言が深く刺さった。
___大したことない…
私にとっては、とてもとても大きなことだ。
『女の沽券』に関わるほどの。
「…分かりました。では、お言葉に甘えて。」
すっと背を伸ばし、息を吸った。
「___今宵、夜伽を命ず。
宴の後、私の部屋に来るように。」
まっすぐ彼の目を見て言い放つ。
誰かが息を呑み、
どこかで、盃が床に転がる音がしたが気にならない。
静寂が広間を包む。
そして永遠かと思うような間の後、彼の承諾の声が耳に届いた。
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分岐ルートへ続く
光秀編 P110~
秀吉編 P122~
家康編 P140~