第15章 魔王の平生 ~別館~誕生記念 【織田信長】
静寂を破ったのは家康だった。
「信長様… ちゃんと莉乃の許可…取ってますよね?」
「貴様も阿呆か、家康。当たり前だ。
そもそも、俺が嫁を娶るのに許可などいらん。」
また静まる間…
「そう言えば、昨日の小娘は相当酔っていたな…」
「そうですね!
お酒に酔われて、意識がない上でも事かもしれません!」
「なるほどね。あの子なら酔ってふにゃふにゃの時はばかみたいになんでも『ハイっ』って言いそう」
「酔いがさめて、そんな話覚えてない可能性もあるぞ」
お互いの発言にうんうんと強く頷く武将たち。
「…貴様ら、よっぽど斬られたいようだな」
ちょうどその時障子が開き、いつもの笑顔で莉乃が入ってきた。
「皆さん~、お茶をお持ちしましたよ~」
途端に駆け寄る武将たち。
「莉乃!! 昨日… 宴の後の記憶あるか!?」
政宗が詰め寄る。
「無いよな! 無いだろ?! 無いってことにしろ!」
「えっ!? 記憶?? それは…」
頬を染めて、ちらりと信長を見る莉乃。
「信長様…良いですか?」
頷く信長。
「わたし、信長様のお嫁さんになります。
改めまして…みなさんこれからもよろしくお願いしますっ。」
恥ずかしながらも、きっぱりと報告した莉乃。
「…あれ? ちょ、ちょっと皆さん、一体どうしたの??」
そう言って訝しげながらも茶を配って回る莉乃。
がっくりと肩を落とす武将たちの理由が分からぬまま。
「俺の妻が煎れた茶は美味い」
一人満足げに茶をすする信長。
『妻が』の部分だけ少し声が大きくなったのは…
武将全員、聞かなかったことにした。
魔王の平生 完