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【イケメン戦国】永遠の始まり~満ちて果てて~

第1章 真紅の彼方 ~前編~ 【織田信長】



___気付かなかった貴方の想い



私の気持ちを夜着に込めて、



どうかあなたをあたためさせて______









___________________________






莉乃がこの乱世に飛ばされてきてから、夏が過ぎ、秋も過ぎ…
季節が半周しようとしていた、霜月の安土城。




お針子 兼 織田軍のお世話係として安土城に住んでいる莉乃は、今日も仕立て終わった着物を納めに天主へと向かっていた。





「信長様、莉乃です。着物をお届けに参りました」


「貴様か、入れ」



信長様の文机には沢山の書状が積み重なり、

飲む間もなく仕事をしていたのだろうか____
淹れられたお茶に温かさは残っていないようだった。




「信長様、最近・・・お忙しそうですね」



信長様は相変わらず威厳のある風格だけれど、
私がこちらに来た頃より少し痩せたように感じる。



「案じるでない。
貴様がこちらの世に来る前と変わっとらん。

そんなことより、着物を早く見せろ。」



信長様はいつも着物の仕上がりを楽しみにしてくれている。



天主の衣桁(いこう)に、持参した小袖をかけてよく見えるようにした。



今回の依頼は、


「年末に行われる大きな宴に着るための、菊をあしらったもの。」

だった。


信長様の依頼はいつもイメージだけ伝えてくる。
それを図案にし、形にするのは私の仕事だ。



「貴様、精進したな。」



着物を眺めながら満足そうに言う信長様に、意を決して抗議する。




「お針子として着物のご注文をいただくのはありがたいのですが、私が着るためのもの、となりますと…

自分で縫った着物を自分で着て、お賃金をいただくわけにはいきません。」




「貴様は『でざいなぁ』なのだろう?

自分で考案した絵柄を縫い、それを着るのは気に入らんのか?」



何を言ってるのかわからない・・・
という顔でこちらを見てくる信長様には『でざいなぁ』の仕事がどのようなものか、今ひとつご理解頂けていないのだろう。





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