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【R18】短編小説【ツイステ】

第5章 ジェイド【後編】



約束の夜。グリムはベッドの上で相変わらず呑気に眠っている。涎まで垂らして眠る姿はいっそ羨ましい位だった。時計を一瞥して、物音を立てないようにベッドから立ち上がる。向かったのは、この寮の門だ。

「…こんばんはさん。」

「こんばんは、ジェイド先輩。」

いつも通り変わらない姿で。自分にそう言い聞かせ笑って隣に並ぶ。ジェイド先輩は特に何も言わず普通に一緒に歩き始めた。

「今日は雨が降りそうですね。あまり長居はせず、なるべく早めに戻りましょうか。」

「確かに、雨降りそうですね。…あ、ちゃっかり傘持ってるじゃないですか!」

「ふふ、当然です。貴方を送る際、濡れる様な事があっては困りますから。」

「…本当、ジェイド先輩は紳士ですね。」

そういうところがズルい、って思う。先を読んでいる所も、こうしてしっかり準備して来てくれる所も。
この夜道もすっかり歩き慣れてしまったなぁ、なんて考えていたらいつの間にかいつもの場所に辿り着く。

「さて、さん。今日は何をされたいですか?」

「今日…は……。」

言葉に詰まった。あの魔法が使いたい、なんて言葉はもう出て来ない。言い淀んでいれば、彼は不思議そうに首を傾げる。

「如何致しましたか?」

「…今日は、ジェイド先輩に聞きたいことが有るんです。」

「それはそれは。僕に答えられることで有ればなんでもどうぞ。」

「………魔法が使えるようになる、というのは嘘ですよね?」

「………。」

ジェイド先輩は表情を全く崩さない。相変わらず何を考えてるのかよく分からない、貼り付けたような笑顔を見せる。なんて答える?嘘をつく?頷く?焦る?
不安な気持ちが胸を埋める。すると彼は、一歩私に歩み寄った。身を屈め、顔が同じ高さになったかと思えば瞳は三日月型に歪み、それはそれは意地の悪い顔付きに変わった。

「えぇ、その通りです。」

「っ!!なんで…なんでそんな嘘を…。」

「貴方の事が好きだからですよ。」

吹き抜ける風が木々を揺らす音だけが聞こえてくる。余りに包み隠さず、戸惑いも無い言葉に虚を突かれ、まるで時が止まってしまったかのように固まった。

「…え?」

「口付けをしたのはさんに僕を男として意識して頂きたかった。魔法が使えるようになると嘯いたのは、貴方の興味を引きたかった。」
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