第5章 ①明治トリップ女子、最強の狙撃手に溺愛される
夕暮れの山道、ふと開けた場所に出た。
「よし、今日はここら辺にするか」
杉本は重い荷物をドサリと木の根元に置いた。
和栗は緩やかな崖の窪みに腰掛けると、真っ赤な夕日を見ていた。
確か、あの時もこんな色の景色だった…。
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「お疲れさまでした〜」
白衣を脱ぎながら、歯科医院長に挨拶する。
「ああ、おつかれ」
私の方には目もくれず、控え室のソファに座りながらカルテに目を通していた。
そんな無愛想な彼だが、なんとなく、私の好きな漫画に出てくる尾形という人物に似ているので、全然気にならない。
むしろ好き。推しとして。
眼鏡のズレを直した後、オールバックの頭を後ろに撫でつける姿を見て、ますます尾形味が強いなぁと、ニヤニヤしながら歯科医院を出た。
今日はコンビニに寄ろうか迷いながらスマホを見た。
待受は、尾形。
「はぁ」
この漫画、金カムのメンバーは全員好き。
でも特に尾形が好き。
なのだが、なにぶん、あいにく彼は…
「会いたいなぁ」
真っ赤な夕暮れの帰り道。
綺麗だなぁと思い、写真を撮ろうとする。
次の瞬間。
——スマホの画面がものすごい勢いで光りだし、視界が、白く弾けた。
「……え?」
手に持つスマホ越しの足元が、土。
アスファルトじゃない。
見上げる。
車の音も、信号もない。
代わりに、遠くで馬のいななき。
「は……?」
周りの景色に気をとられながら歩いた瞬間、誰かの胸にぶつかった。
「っあ、失礼しました」
咄嗟に謝った。
「前を見ろ」
低い声。
反射的に見上げる。
鋭い目に、オールバック。影を落とす長いまつ毛。
左右対称についた頬の傷から目が離せない。
「…は、はいすみませーー」
和栗は思わず一歩下がる。
けれど足元の小石に引っかかり、よろけた。
その瞬間、腕を掴まれる。
強い力。
「……妙な格好だな」
軍服に生成色の外套を羽織った男——尾形は、じっと和栗を見る。
白いブラウスにスカート。肩掛けバッグ。どれも見慣れぬ物。
「…ここは、どこですか?」
尾形だ、と、思わず口から出そうになる言葉をグッと飲み込んでから話す。
尾形の目が細くなった。
「は?」
「えっと……令和、ですよね? 今。明治……じゃなくて……あ、明治村かしら?ドッキリ?」