第5章 ①明治トリップ女子、最強の狙撃手に溺愛される
囲炉裏の火がぱち、と鳴った。
「和栗さん、その縫い目はこうだ」
杉本佐一は穏やかに笑い、和栗の手をそっと支える。
ほつれた服をするすると針で縫っていく。
「わ、杉本君、器用なんですね。すごいです」
「いやぁ、昔から自分でやってたから嫌でも慣れただけだよ」
今日はこの空き家。
珍しく屋根がある環境で寝れる。
実は和栗はこの間、突然明治にトリップしてきた。
しかも最終巻まで読んだあの漫画。
何回も2次創作で見てきた金カムのトリップである。
初めに会ったのは尾形、そして合流してきた杉本。
アシリパさんと白石、谷垣さんは私が来た瞬間に弾けるように消えたらしい。
定かでないが、私が来た衝撃で時空が歪んじゃったらしく、
今は3人を探しながら目的に向かっている。
けど、漫画でどのシーンかさっぱり分からないのだ。
もしかして分岐ルート入った?謎である。
ともかくこの話しはまた今度。
杉本に教えてもらいながら繕っている光景を、少し離れた場所から尾形は見ていた。
無表情。
だが視線だけが鋭い。
「尾形さん?」
和栗が振り向く。
「……杉本、手が近い」
淡々とした声。
「え?」
杉本はきょとんとする。
「いや、教えてるだけだろ?」
「教えるのに指を絡める必要はない」
空気が凍る。
杉本の目がすっと細まる。
戦場で見せるそれと同じ光。
「お前には関係ないだろ」
「ある」
即答。
尾形は立ち上がり、静かに歩み寄る。
「それは俺のだ」
和栗の頬が一瞬で熱を持つ。
のと同時に一瞬即発になりそうでギョっともする。
「ちょ、ちょっと尾形さん……!」
杉本は数秒、尾形を見つめ――ふっと笑った。
「オモチャ取られたみてぇな顔すんなよ。それに和栗さんは物じゃないだろ」
火花が散る寸前の緊張が、すっと解ける。
めいは慌てて尾形の袖を掴む。
「尾形さん、怒ってるんですか?」
「怒っていない」
即答。しかし。
「……ただ、気に入らん」
低い声。
「お前が他の男に笑うのが」
息が止まる。
「尾形さんの前でしか、あんなふうに笑いませんよ?」
沈黙。
「あ、あのほら、尾形さんと杉本君がいる安心感からって意味ですよ?!」
数秒後、尾形はそっとめいの顎を上げる。
「なら証明しろ」