第78章 禁じられた遊び
「………ゅり…朱里…」
「っ……んっ……んん……」
「……朱里っ…朱里、起きよ…」
(ん……んっ…のぶなが、さま…?……ん?)
ぼんやりと霞がかかったように、はっきりしなかった意識が、何度目かの呼びかけで、徐々に輪郭を帯びてゆくように浮上してくる。
呼びかけに応えようとするも、目蓋はピタリとくっついてしまったかのように重く、口は返事をしようと開いているつもりだったが、実際には薄っすらと唇が離れた程度のようだった。
「朱里っ…貴様、大丈夫か?」
ようやく瞳を開いた私は、心配そうに私の顔を見下ろす信長様と目が合って……自分が、信長様の膝枕で横になっていたことに初めて気が付いたのだった。
(ひゃっ…何で膝枕??って……あれ??)
「の、信長様っ…ご、ごめんなさい……」
(信長様に膝枕してもらっちゃうなんて……っていうか、あれ?私…着物、着てる……??乱れてない…なんで……?)
状況が飲み込めず、がばっと勢いよく起き上がると、頭がクラクラしてしまい、思わずギュッと目を瞑った。
「っ………!」
「大丈夫か?貴様、今の今まで眠りこけておったのだから、急に無理するでない」
「ぇ………」
(眠ってた……?今まで…ずっと…!?)
室内を見回すと、部屋の中には信長様と私の二人だけで、いくつもの空いた銚子と盃が、端の方に片付けられて置いてあった。
月見酒を楽しもうと開けていた障子は、いつの間にやら閉まっていた。
月はもう隠れてしまったのだろうか…障子の外からは月明かりさえ射し込んできていなかった。
知らぬ間に、だいぶ夜も更けているようだ。
「……あのっ、信長様、えっと…光秀さんは……?」
「ん?光秀か?彼奴なら、とっくに帰ったぞ。貴様がウトウトしだして暫くは、彼奴と二人で飲んでおったのだがな。
くくっ…貴様を膝に寝かせて、寝顔を肴に、な…」
意地悪そうな笑みを浮かべながら、頬をサラリと撫でられる。
「なっ!や、やだ…もぅ…」
(ひぃーっ、信長様だけじゃなく、光秀さんにも寝顔を見られてたなんて…恥ずかし過ぎるよっ。
で、でも…じゃあ、あれは全部、夢だったの……?)
先程までの生々しい交わりの記憶が、ありありと頭の中に浮かんでくる。
信長様と光秀さんと三人で……あんなことやこんなことを……