第75章 ひとり寝の夜
「っ…はぁ…はぁ…」
(……イッちゃった…自分で…指だけで…)
脱力したように、立てていた膝が崩れ落ちる。
秘部に埋めていた指を抜くと、こぷっ、といやらしい水音が立つ。
ねっとりとした蜜に塗れた指先が恥ずかしくて、どうしていいか分からぬままにキュッと握り締めた。
荒く乱れた呼吸のまま、寝返りを打ち、興奮冷めやらぬ身体を小さく丸める。
身を捩った瞬間、股の間がにゅるりと滑って、奥がひくひくと物欲しげに疼いているのを感じてしまった。
(っ…イッたばかりなのに…もっと、欲しいっ…)
更なる快楽を求めて身体の疼きが止まらなくなっていた私は、ぼんやりと視線を彷徨わせる。
気怠い身体を寝台に横たえたままで、私が虚ろな目を向けた先にあったものは………寝台の横の机の上に置かれた、小さな箱だった。
出陣の前の夜、濃密に愛しあった後で、信長様は冗談めかして、こう仰った。
『独り寝が寂しくなったら、コレを使ってもよいぞ?俺を思い出して、コレで疼く身体を慰めるがよい……特別に許す』
その時の、信長様の悪戯っぽい顔が頭に浮かぶ。
(あれは冗談だったのだろうか…私を揶揄っただけ?使うはずがない、そう思ってわざと仰ったの…?)
『もうっ、なんてこと言うんですかっ!使いませんよ、こ、こんなもの……』
一度だけ…たった一度だけ、信長様の手によって使われたソレ。
でも…それ以来、一度も使っていない…使うこともない、そう思っていた。
けれど……今、私はソレに自ら手を伸ばそうとしている。
(もっと、もっと…気持ち好くなりたいっ…信長さまっ…)