第69章 接待〜甘く解して
元日の朝は、久しぶりに政宗の作ったお雑煮とおせちを頂き、大満足だった。
「んー、やっぱり政宗の作るお料理、美味しいっ!」
「おぅ、どんどん食えよ。雑煮のお代わり、まだあるぞ?」
「朱里、あんた、食べ過ぎじゃない?午後から、信長様と年始の謁見に出るんでしょ?食べ過ぎて苦しくなっても知らないよ?」
「家康〜、冷たいこと言うなよ。餅はよく噛んで食えよ、朱里」
「秀吉さん……子供扱いしすぎでしょ…朱里ももう母親なんだから」
「うっ…ごほっ!」
「ちょっと…そっちに子供みたいな大人がいるんですけど…」
「うおっ、三成、大丈夫か?早く茶を飲みなさい」
「くくっ…相変わらず、お前は三成の母親のようだな、秀吉」
「うるさい、光秀っ、てめぇはおせちを混ぜずに食えっ!」
「はぁ…もう…面倒臭い…」
わいわいガヤガヤと、武将達の愉しげな?会話が繰り広げられるのを、上座で信長様の隣に座って聞いていると、ほんわかと穏やかな心地になる。
久しぶりに皆が揃った正月の風景は、変わらずに幸福そのものであり……いつまでもこんな時が続いて欲しい、と願わずにはいられなかった。
信長は、武将達の騒々しさに呆れながらも、それを見て幸せそうに笑みを浮かべる朱里を満足そうに見遣っていた。
「朱里、午後は譜代の家臣達との謁見がある。尾張や岐阜、安土からの気心の知れた家臣達だ。
謁見の後は、茶席を設ける。俺が茶を点てるから、茶室には貴様も同席しろ」
「っ…はい、っ…て、えっ?信長様がお茶をっ?」
意外なものでも見るように俺に向けられる視線に、愉快な心地になる。
「貴様にも点ててやる。楽しみにしておれ」
信長様がお茶を点てる……?
茶器を収集するなど、茶の湯にも造詣が深い信長様ではあるが、普段はやはり忙しく、ゆっくり茶を点てておられる姿は見たことがなかった。
茶の湯は堺の今井宗久から教えを受けた、と聞いたことがあるから、きっと本格的なものなのだろう。
信長様は、やるとなったら何でも完璧にこなされるから…
大坂城に新しく作られた茶室も、見事な造作だと聞いている。
(いつも、お茶は私が略式で点てて差し上げるばかりだから…信長様のお点前か…楽しみだな)