第68章 おあずけ
「一人で思い悩むな。貴様の悩みも心配事も、俺に分け与えろ。
楽しいことも苦しいことも、共に分かち合ってこそ、夫婦であろう?」
「っ…うっ…信長さまっ…」
「俺とて、貴様との子は何人でも欲しい。できることは協力しようと思う」
「ううっー、嬉しいです…信長さま」
「ちなみに言っておくが、俺の子種は何度目だろうが濃い。貴様が案ずることは、何もない。とんだ取り越し苦労だったな」
「ぶはっ!な、何をっ…そんなの分かるわけが…」
「この俺が言うのだから間違いない。それとも……その目で確かめたいのか?」
「なっ……!?」
自信満々で堂々と言われてしまえば……そうなのかもしれないと思えてしまうから、不思議だ。
信長様にはやっぱり敵わない。
「信長様…ありがとうございます」
「ん?」
信長様の大きくて広い背中に腕を回して、ぎゅっと抱き締める。
そうするとすぐに抱き締め返してくれる。
暖かく包み込まれるような、その安心感に身を委ねていると、悩んでいたことも小さなことに思えてくる。
お世継ぎのことは、きっとこれからも私たちを悩ます。
周りの心ない声に、傷つくこともあるだろう。
それでも……信長様と二人なら、どんな試練でも乗り越えていける。
『楽しいことも苦しいことも、共に分かち合おう』
信長様
貴方がそう言ってくれたから……私は頑張れるのです。