第67章 秘密の宴
「っ…そろそろ起きないと…秀吉さんに叱られちゃいますよ?」
朱里は身体を擦り寄せながら、俺の胸元から上目遣いで見つめてくる。
全く…そんな顔で、もう起きろと言われても全然説得力がないのだが…無自覚とは本当に恐ろしい。
「くっ…構わん。昨日で年内の政務は終わらせたゆえ、急ぎのものがなければ、今日からは貴様とゆっくりできる。
朝から晩まで閨で過ごしても…俺は一向に構わん」
「ええっ…やっ、それは、ちょっと…
…………ん?信長様、眠いんですか?」
ふぁあ、っと大きな欠伸をした俺を、朱里は怪訝そうな顔で見る。
「あぁ…眠い…昨日は一睡もしてないし、今日はもう…色々やり過ぎた…ふぁあっ…」
またもや大きな欠伸が出る。
身体が泥のように重だるく、思考がはっきりしない。
目蓋が…重い……もう開けていられない。
『信長様』と呼びかける朱里の声が、段々と遠くなっていく……
朱里は、すぅすぅと穏やかな寝息を立てて眠る信長の髪を、起こさないように優しい手つきで撫でていた。
子供のようにあっという間に眠ってしまわれた。
眠そうになさる、無防備な姿も初めて見た。
昨日まで、寝る間も惜しんで政務をこなされていた。
私とゆっくり過ごしたいからだ、と言って下さった。
昨夜も…一睡もしてない、と言われていたし…きっと、私が心配かけたから…
「信長様…ごめんなさい。ゆっくり休んで下さいね。
愛しています…心から」
せめて今だけは…貴方の穏やかな眠りを私が守ってあげたい。