第10章 小さな恋敵
「う〜ん、おじうえ〜どこ〜」
眠たげな江姫の声に、ハッとなって目が醒める。
見ると、隣の褥で江姫が目を擦りながら起き出したところだった。
天主には既に朝日が差し込んできており、朝の訪れを告げていた。
(あのまま寝ちゃったんだ……あっ、着物……あれ?着てる…)
「2人とも、起きたのか?」
声のする方に目をやると、きちんと着物を整えて脇息にもたれながら、ニヤニヤ笑う信長様の姿があった。
目が合うと、悪戯っぽい顔で目配せされる。
「伯父上、おはようございます!」
「ふっ、まるで子供が2人おるようだな。さぁ、支度をせよ。朝餉に行くぞ」
(信長様が着物を着せて下さったんだ……う〜恥ずかしいよ)
恥ずかしくて下を向く私に、
「朱里、行くぞ」
手を差し伸べながら振り返る信長様。
そこには私の大好きな笑顔があって、満たされた心地で差し伸べられた手を取った。