第9章 妹
その日の夜
天主で信長様と月を見ながらお酒を酌み交わす。
昼間の対面のあと、私は、3人の姫たちに城の中を案内したり、一緒にお茶をしたり、と打ち解けて過ごすことができた。
姫たちは興味津々で終始楽しそうだったけれど、結局、お市様は部屋から一歩も出てこられず、信長様と話をされることもなかった。
信長様もまた、お市様とは距離を取っておられるようで無理強いされることはなかった。
「………信長様。お市様とは…その…」
「朱里、市の話はするな。……今さら昔のように打ち解けられるとは思っておらん。……ただ、時々、顔を見れればよい……息災でいてくれれば、それでよいのだ」
信長様はそう言うと、一気に盃を煽り、ほぅと息を吐いた。
(それは本心かもしれない……でも、信長様の想いはお市様には届いていないのでは……)
「そのような顔をするな。貴様が気に病むことではない」
言いながら私の身体を引き寄せ、自身の膝の上に乗せる。後ろ頭に手を回され、強引に唇を塞がれる。素早く割り入れられた舌が口内を無茶苦茶に犯す。もう片方の手は既に着物の裾を割り、まだ濡れてもいない秘所に伸ばされている。
「んっ、信長さまっ。あっ、待って」
「…待たぬ。今宵は貴様が俺を暖めよ」
犯されるように強引に抱かれたその夜、信長様の瞳の奥は最後まで暖まることはなかった。