第2章 安土にて
(あぁ、退屈。毎日お城の中で息が詰まりそう…)
今日も朝から何をするでもなく、朱里がこの日何度目かの溜息をついていた、その時、
「朱里、いるか?入るぞ」
襖の外から声が掛かり、秀吉と政宗が顔を覗かせる。
「秀吉さん、政宗も。どうしたの?」
「いや、退屈してると思ってさ、ほら、茶でもどうだ?」
そう言うと、お茶と美味しそうなお菓子を見せてくれる。
「わっ、桜餅!美味しそうだね。政宗が作ったの?」
「おぅ、間違いなく上手いぞ」
安土へ来てもうすぐ一月、最初はよそよそしかった武将達ともようやく気軽に話せるようになってきた…信長様を除いては。
3人でお茶を飲みながら他愛ない話をしていると、秀吉さんが思い出したように言い出した。
「朱里、信長様から伝言だ。明日、城下へ行かれるそうだから、供をせよ、とのことだ」
「えっ、信長様と2人きりで、ですか?」
「そうだ。安土の城下はまだ見たことなかったろ?楽しんでこいよ」
(城下には行きたいけど、信長様と2人きりなんて…不安しかない)
「これは信長様からだ」
そう言って秀吉さんが渡してくれたのは、綺麗な藤色の小袖。金糸で蝶の刺繍が入ってる、上品そうなもの。
「信長様がお前にと、自ら選ばれたんだ」
秀吉さんは嬉しそうに話してくれたけど、私は複雑な気持ちで小袖を受け取った。