第7章 誕生日の贈り物
辺りが夕闇に包まれる頃、宴のために大広間には大勢の人が集まっていた。
宴の開始に先立ち、信長様への誕生日の贈り物が披露される。
皆がそれぞれ想いを込めた贈り物を渡すと、信長様はそれを1つ1つ手に取って感想を述べながら、嬉しそうな表情を見せられる。
(皆の贈り物は信長様への想いが籠もってて素敵だな。)
「……次は、朱里の番か」
幸せそうな信長様に見惚れて物思いに耽っていたところ、急に声をかけられて慌てて居住まいを正す。
「っ、あっ、はいっ。…私からはこれを……」
綺麗な布で作られた袋に入った小さな壺を差し出す。
「それは何だ?何が入ってる?」
信長様が目を細めて壺を凝視する。
「っ、金平糖です。お好きだと伺ったので」
皆が意外そうに私と壺を交互に見ている。そんな中、光秀さんが意地悪そうに私に向かって声をかける。
「皆に散々聞いて回った割には、随分と手堅い贈り物を選んだものだな」
「こら、光秀、余計なこと言うな。朱里、金平糖は間違いない選択だぞっ。手堅いことはいいことだ、うん。………ただし、御館様、朱里からの贈り物だからって言って食べ過ぎはいけませんよっ。1日5粒、数は守って頂きませんとっ」
「くどいぞ、秀吉。祝いの日だ、今日ぐらいは大目に見よ。……朱里、貴様からの贈り物、ありがたく頂こう」
信長様は嬉しそうに金平糖を受け取って下さった。
その様子に安堵しつつ、私は今一度居住まいを正して、信長様に申し上げる。
「っ、あのっ、贈り物はもう1つあるんです……今宵、宴のあとで信長様の夜の時間を私に頂けませんか?」
「おいおい、朱里。お前本気で『贈り物はワ、タ、シ』をやるつもりか〜?」
「小娘にしては大胆だな」
「アンタ、何企んでるの?無茶しないでよ」
政宗たちが揶揄ってくるのを無視しつつ、真剣な表情で信長様を見つめる。
「…よいだろう。俺の時間を貴様にやる。貴様からの贈り物、楽しみにしているぞ」