第49章 追憶〜秀吉編
「っ…御館様っ!お戯れも程々になさって下さいっ!」
「………何のことだか?」
「あ、あのような…真っ昼間から破廉恥な…」
「ん?」
「っ…朱里にあんな艶めかしい声を…」
「…待て、それ以上言うな…貴様、死にたくなかったら…全て忘れろ」
不機嫌そうな暗く低い声音が響く。
ニヤニヤと揶揄うような表情だった御館様の顔色がサッと変わり、みるみるうちに鬼の様な恐ろしい表情になっていく。
その急な変化に怯みつつも、臣として主に言うべきことは言わねば、と妙な正義感が湧き上がる。
「仲睦まじいのは結構ですが、少し人目を気にして頂きませんとっ!城主としての威厳に関わりますっ!」
「チッ…相変わらず堅いことを言いおって」
ブツブツと文句を言いながら、目を通し終えた報告書を雑に投げて寄越される。
それを受け止めて整理してから御館様を見ると、早くも次の報告書に取り掛かっておられる。
山のように積まれていた報告書は、御館様の手によってあれよあれよという間に減っていく。
(流石は御館様、切替が早くていらっしゃる。俺は…まだまだだな、修行が足りねぇ…)
「…秀吉、貴様、今日はこの後は用事はないのだろう?休みをやる。たまにはゆっくりしろ」
「ええっ?あ、いや…御館様は?この後、城下の視察に行かれるのでしょう?なら俺も一緒に…」
「別に構わんが…貴様は俺が言わんと休まんだろう?たまには息抜きもしろ…俺を見習ってな」
「はっ!お気遣い頂きありがとうございます!しかし、大丈夫です!御館様のお傍にいられるのなら息抜きなど不要です。この秀吉、どこまでもお供致しますっ!」
「…ふっ…大袈裟なやつ」
どこまでも いつまでも
貴方のお傍で 貴方と共に 歩んでいきたい
貴方と、貴方の大切なもの、を守る為に俺はもっと強くなる
貴方の目指す理想の未来を共に見続けるために……