第46章 男と女
「朱里、昼間、秀吉から聞いたのだが、明日は長浜で夏祭りがあるそうだ。夜には花火も上がるらしい。
明日は昼過ぎから出かけるゆえ、朝から用意をしておけ」
「……ええっ?夏祭り?花火?…長浜って秀吉さんのお城があるところですよね?あっ、じゃあ、久しぶりに馬にも乗れますね!
わぁ…お祭りなんてほんと久しぶり…」
目をキラキラ輝かせて嬉しそうに話す朱里の様子に、自然と顔が綻ぶ。
「花火も楽しみだなぁ…あっ、でも夜遅くなりますね…」
「秀吉が、城に泊まれ、と言っておったゆえ、そうするつもりだ」
「そうですか、それならゆっくりできますね………あっ!」
嬉しそうに話していた朱里の顔が、何かを思い出したのか、みるみる曇っていく。
「………どうした?」
「………信長様、私…お祭りには行けません」
「?急に何を言う?」
「だって…結華はまだ外には連れて行けませんから…」.
布団の上に寝かせた結華の小さな身体をトントンとしてやりながら、残念そうな、悲しそうな表情をみせる。
「ああ…明日は結華を乳母に預けよ。一晩ぐらい大丈夫だろう?」
「ええっ?っ…でも…」
「朱里、俺は貴様と二人で出かけたい。貴様と結華と三人で過ごす時間はこの上なく幸せなものだ。だが…たまには貴様と二人だけの時間も欲しい」
「信長様…」
肩を抱き寄せ、唇を重ねる。深いものではなく、啄むような軽い口づけ。
ちゅっ ちゅっ ちゅぷっ
「ん…はぁ…ぁっ…」
軽い口づけにもかかわらず息を乱し、表情を蕩けさせる朱里の艶めかしい姿に歯止めが効かなくなりそうで…そっと唇を離す。
「……明日は結華は乳母に任せよ、よいな?」
「っ…は…い…」