第46章 男と女
その日の夜
授乳が終わり、寝かしつける為に抱っこをしてゆらゆらしながら部屋の中を歩く私を、信長様は褥に横になって見ている。
幸せな家族の時間
「……寝たか?」
「ふふっ…寝ました。最近は寝つきが良くて助かります」
川の字に敷いた褥の、信長様と私の間に、起こさないようにそっと寝かせると上から布団を掛けてやる。
(可愛いなぁ…睫毛が長くて…信長様に似てるかな)
「………朱里」
「…え?あっ……きゃっ…」
川の字の反対側にいたはずの信長様が、いつの間にか隣に来ていて……気がついたら、ぎゅっと抱き締められていた。
逞しい腕の中にすっぽりと包まれて、夜着越しでも分かるほど筋肉質で鍛えられた厚い胸板を頬に感じる。
久しぶりに、逞しい信長様の身体に触れて、『男』を強く意識してしまい、心臓が早鐘を打ってドキドキと煩いぐらいに鳴っている。
「朱里…今宵は貴様を愛でたい…良いか?」
耳元で吐息混じりに甘く囁かれて、身体の奥がズクッと疼く。
「っ…あ…ん…はい…いっぱい…愛して…欲しい、です」
「くっ…それは…煽り過ぎだろう…愛らしいことを言いおって、貴様、どうなっても知らんぞ?」
口の端を上げて意地悪そうに笑う信長様
こんな色っぽい『男』の表情も久しぶりに見る。
最近は、穏やかで優しい父親の顔しか見ていなかったように思う。
信長様の端正な顔が近づいてきて、柔らかな唇がそっと重ねられる。
最初はチュッチュッと啄むように、触れては離れ、を繰り返していた口づけは、徐々に甘く深いものへと移っていく。
ちゅっ ちゅぷっ くちゅくちゅ じゅぷっ
「んっ…はぁ…ん…あぁ…」
息をしようと唇を薄く開いたところを、狙いすましたように舌が浸入し、口内をクルリと舐め回す。
尖った舌先が上顎の奥を擽り、くちゅくちゅと互いの唾液を交えながら、熱い舌が絡みついてくる。
くちゅ ぐちゅ
「はぁ…ぅんんっ…ぁ」
(ん…気持ちいい…)
信長様が、チュッとわざと音を立てて唇を離すと、二人の間を銀糸が繋ぐ。
はぁ…と息を吐いた私の身体をゆっくりと褥に組み敷くと、今度は首筋に熱い舌が這わされる。
「んんんっ…あっ、あぁ…」
舌先でツーっとなぞったり、強く吸いついたり…息つく暇もないほどに繰り返される愛撫に、自然と顎が上がっていき、はしたない声も漏れてしまっていた。