第43章 決戦
湯殿に来ると早々に、信長様は私のドレスに手をかけて脱がせようとする。慌ててその手を制して、
「やっ…自分でしますから…信長様はご自分のをなさって下さい、ね?」
「…ふっ…貴様を脱がせるのもまた一興なのだがな」
信長様は、少々不満げな表情を見せながらも、さっさと裸になると、迷いのない足取りで湯殿の中へ入っていった。
「早く、来い。俺がのぼせる前にな」
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ドレスを脱いだ私は、躊躇いがちに湯殿の中へと足を踏み入れる。
裸の身体を小さな手拭い一枚で隠しながら………
(うっ…恥ずかしいな…いつもは襦袢を着て入るのに…)
「…信長様、お待たせしました」
「…遅い…」
眉間に皺を寄せて少し不満そうな顔をした信長様は、いきなり私の腕を引き寄せる。身体を隠していた手拭いがハラリと落ちて、裸の身体が信長様の腕の中に包まれた。
鍛えられた逞しい胸板が直に触れて、私の胸の膨らみを押し潰す。
胸の尖端はもう既に少し硬くなり始めていて…それを気づかれてしまうのが恥ずかしくて、慌てて身を捩って離れようとするが…当然のように信長様は離してくれない。
「んっ…や…信長様、お背中流しますから…座って」
「ふっ…貴様がのぼせても困るな。朱里、今宵はこれを使って洗え」
信長様が手渡してくれたのは、見たこともない白い固形のもの。
「???これ……何ですか?」
「南蛮の宣教師からの献上品だ。『シャボン』というらしい。こうやって……泡だてて身体を洗うそうだ」
信長様が手の中で擦ると、その白い固形物からはきめ細かな泡ができて、同時に何とも言えない芳しい良い香りがしてきた。
「わぁ!不思議…それに、すごく良い香りがしますね!」
日ノ本の香とはまた趣の違う異国の香り。上品ですごく贅沢な香りが鼻腔をくすぐる。
信長様がされたように、手の中にシャボンを包んで泡立ててみると、滑らかでふんわりとした泡が立ち、それをそっと信長様の背中に乗せてみる。
手のひらに泡をつけて、優しく撫でるように肩、背中、腕と順番に洗っていく。泡がふわふわして気持ちがいい。
湯殿にはシャボンの豊かな香りが広がっていた。
「っ…あぁ…好い心地だな…朱里、前も洗え」
信長様は、後ろ手に私の手を引っ張り、自身の身体の前へと這わす。ぐいっと引かれて、信長様の背中に裸の身体が密着してしまった。