第7章 誕生日の贈り物
若葉香る皐月の頃
私は、仕事の合間に様子を見に来てくれた秀吉さんと、庭の草花を愛でながらお茶を飲んでいた。
部屋の外からは、忙しく働く女中さんや下働きの人の声が聞こえてきて、なんだか落ち着かない。少し前からずっとこんな感じで、皆が忙しそうに行き交っている。
「…ねぇ、秀吉さん?」
「ん?なんだ?どうした?」
「最近みんな忙しそうにしてるみたいだけど、何かあるの??」
「ん?そりゃお前、もうすぐ御館様のお誕生日だからな。安土では毎年当日は宴を催して盛大にお祝いするんだ。城下でもこの時期はお祭り騒ぎだ。御館様は領民達に慕われてらっしゃるからなっ。各地の大名からも続々と祝いの品が届いたり、挨拶に来たりしてるから、女中たちはその対応に追われてるんだ。宴の準備もあるしな」.
(えっ?秀吉さん、今なんて言った??)
「……信長様のお誕生日??それって、いつ?私、知らないよっ?」
「えっ?そうなのか?悪いっ、御館様から聞いてるものと思ってた」
(っ、知らなかった。だから皆こんなに落ち着かないんだ)
「秀吉さんは、お祝いに何か贈ったりするの?」
「ん?ああ、俺は今年は茶器を贈るつもりだ。御館様は茶の湯を好まれるからな。とっておきの茶器を京から取り寄せたんだ」
「そうなんだ…」
(信長様のお好きなものか……私、何にも知らないかも……)
表情を曇らせて黙り込んだ私を見て、
「まぁまぁ、まだ時間はあるから。俺も相談に乗るぞ」
「ありがとう、秀吉さん。皆にも聞いてみることにするよ」