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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第39章 紫陽花の寺


梅雨の季節に入り、雨の降る日が続くようになった。本丸御殿の庭に植えられた紫陽花も花開き、ひと雨降るごとに紫の色を濃くしている。
目覚めると今朝もまた、しとしとと静かな雨が降っており、天主の欄干をしっとりと濡らしていた。

「今日も雨ですね」

「ああ、よく降るな…このぐらいの雨ならば、めぐみの雨だがな。
作物の生育には適度な雨が必要だ。だが、度を過ぎた大雨は田畑を流し、川を荒れさせる。民が困らぬように目を配ってやらなくてはな」

雨が落ちてくる空を見上げながら、信長は憂いを帯びた表情を浮かべていた。

(数日前から雨が続いている。地盤の緩い土地ではそろそろ地滑りなどが起こりかねんな…秀吉に各地の見回りを命じなくては…)

雨でも信長の政務に休みはない。

日々、各地から上がってくる報告書、訴訟の仲裁、年貢の換算、家臣達からの相談事、公家衆や朝廷とのやり取り、などなど……
その仕事は多岐に渡っており、秀吉や三成が処理をするものもあるが、最後は必ず自分の決裁が必要になる。

謀叛や一揆が起これば制圧に出向く。家臣に任せもするが、自分が軍を率いた方が兵達の士気も揚がり、その分損害も少なくなるとなれば、自ずと出陣することになる。

もう何年もこんな生活を続けている。

今、日ノ本で表立って織田に敵対する者はいない。
奥州諸国は政宗がまとめているし、関東は朱里の実家である北条家があり、家康も三河・遠江を上手く治めている。
上杉・武田とは数年前から同盟関係にあり、四国の長宗我部、九州の島津とは一応の均衡を保っている。

残る懸念は、中国の毛利だが……いまだ元就の所在は掴めない。
光秀や九鬼の水軍が探索をしているが、あと一歩のところで尻尾を掴ませないようだ。

(このまま黙って隠れている男とも思えんが…動きが読めんな)


戦と政務に明け暮れる日々

親兄弟が殺し合わずにすむ平和な国を
民百姓が安心して暮らせる豊かな国を

身分や地位に囚われずに、誰もが生きたいように生きられる…そのような自由な世を実現するために、正しい政を行う……それこそが俺が今、為すべきことだ。


信長は、様々に思考しつつも、今まさに書き終わった書状の最後に、いつものように『麟』の花押を書く。

あの日から、『天下布武』の印とともに使い始めた『麟』の花押

(俺は…必ず…『麒麟』が降り立つ世を造る)

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