第34章 すれ違い
おかしい…
これは絶対に避けられてる……
あの夜以来、信長様は意図的に私を遠ざけている。
二人でいつも天主で食べていた夕餉も、最近は別々だ。
『しばらくの間、政務が忙しいから』と、寝所を別々にする、自室で休むように、と人伝てに告げられた時は一瞬耳を疑った。
(どんなに忙しくても、夜は二人だけで過ごせる大事な時間だったのに………信長様はそうではないの?)
考えるほどに悲しくなって、胸の内がもやもやと悪い想像ばかりしてしまう。
千代などは、『新婚なのに寝所を別々にするなんて』と憤っており、今にも天主に怒鳴り込まんばかりの勢いだ。
(実際は、千代は信長様が怖くて話もできないみたいだけど)
あの夜、信長様は傷ついた子供のような目で私を見ておられた。
『俺を拒むな』と…
為された強引な行為とは正反対の不安げな瞳
信長様を拒む気など微塵もなかったけれど、私は貴方を傷つけてしまったのだろうか……
貴方の心が分からない
ずっとお傍にいると誓ったばかりなのに………
見えない大きな壁が目の前に立ち塞がって、信長様の心を見失ってしまいそうな不安に今にも押し潰されそうだった。