第31章 祝言
その日から秀吉さん主導のもと、私達の祝言の準備が進められていった。
南蛮寺で婚礼の儀式を執り行った後、お城で重臣達を集めた盛大な宴をすることになり、政宗が宴の準備を取り仕切ってくれることになった。
国内外に正式に信長様の婚儀が知らされたことで、毎日各地からお祝いの品が届いているようで、その確認に秀吉さんは大忙しみたいだ。
贅を尽くした豪華絢爛な贈り物の数々を目にして、改めて天下人たる信長様の権威の凄さを実感する。
「……すごい数の贈り物だね、秀吉さん」
祝いの品を整理をしている秀吉さんの手伝いで、品物を目録に書き記しながら、その数の多さに圧倒される。
整理しても整理しても次々と部屋に運び込まれる豪華な品々に見惚れながら、秀吉さんに話しかけた。
「天下人たる信長様の婚儀の祝いだからな。
正室になる朱里への贈り物でもあるんだぞ」
「…嬉しいけど、私は特別なものは要らないよ。
信長様のお傍に居られれば、それで十分」
「…朱里は欲がないな。
まぁ、そういうところがお前の良いところだけどな」
秀吉さんは私の頭をくしゃっと撫でて、満面の笑みで微笑んでくれる。
(欲がないなんて嘘だ)
(信長様のお傍にいたい。私だけを見て欲しい)
(信長様に他の女(ひと)を見て欲しくない、触れて欲しくない)
(信長様の全てを独り占めしたい)
信長様のことになると、私はこんなにも貪欲になる。
あの方は本当は、私の欲の深さに気付いていらっしゃるかしら。
求めても求めてもまだ足りない、もっと愛して欲しいと感じてしまう、この強欲さを許して下さるだろうか。