第30章 南蛮の風
「……なるほど、そのようなお考えとは…
さすがは御館様ですっ!では、早速手配にかかります!」
秀吉さんがそそくさと部屋を出ていってしまうと、信長様はくっくっと笑い声を漏らされた。
「くくっ、彼奴は切替が早いな」
(ふふっ、秀吉さんは信長様のこと、本当に尊敬してるんだな)
「…でも、南蛮寺で祝言を挙げるなんて、素敵です。
あの『おるがん』の演奏をまた聴けるのですね!」
「視察の際にオルガンティノから聞いた婚礼の話が、大層楽しげなものだったのでな。
貴様もあの場を気に入っていた様子であったしな」
「はい!神父様も良い方でしたし、城下で皆の前で祝言を挙げられるなんて、嬉しいです。
信長様、ありがとうございます!」
「………邪魔者がいなくなったことだ、先程の続きをするか?」
不意に信長様が私の手を引き寄せて、その腕の中に閉じ込める。
「……んんっ、っ、や…はぁ…」
あっという間に唇が重なり、強く吸い付くような濃厚な口づけがなされる。
舌先が強引に唇をこじ開けて侵入し、口内を荒々しく犯していく。
息つく間もない強引な口づけに頭の中が真っ白になり、身体の奥が熱く燃え始める。
(このままこの熱に流されてしまいたい……)
心の奥でそう思いながらも、必死に理性を取り戻して、信長様の胸を押し戻した。
「……んっ、これ以上は…だめ…です。
もう…表に行くお時間です…よ」
「………俺を拒むとは、いい度胸だ。
…今は我慢しておいてやる。
……そのかわり今宵は覚悟しておけ」
口の端を吊り上げて不敵に微笑む信長様の妖艶な微笑みに、心を奪われながら、今宵の甘い時間を想像してしまい身体の奥が熱く疼いた。