第27章 再会
大筒による威嚇と、光秀の内通工作によって北条方には多数の離反者が出ることになり、城を取り囲んで数日で城内にいる有力な家臣達から降伏の申し出があり、本格的な戦は回避された。
朱里の兄は家臣達を纏めきれず、織田との戦に反対する者が大半であり、光秀の調略も容易であったようだ。
城下の屋敷に隠居させられていた朱里の父母も無事で、久方振りに朱里に逢えたことを喜んでいた。
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戦後の処理をあらかた終えて、漸く安土へ帰還の途につく。
「御館様……本当に帰りも鉄甲船に乗られるおつもりですか…?
朱里も一緒ですし、陸路になさっては?」
秀吉が何やら情けない顔で恐る恐る聞いてくる。
「これは決定事項だ。反論は認めん」
ピシャリと言い放ってやると、隣で光秀が追い打ちをかけてくる。
「朱里は鉄甲船に興味があるようだぞ、なあ?」
「はいっ!こんなすごい船、初めてですし、乗れるなんて楽しみです!
………秀吉さん、顔色悪いけど大丈夫??」
「ううぅっ」
「諦めろ、秀吉。
御館様が、一度口に出されたことを覆されたことがあるか?」
「光秀〜、お前は人の気も知らないで……」
京への上洛から小田原征伐まで、随分長く安土を留守にしたような気がする。
朱里と祝言の約束をした日のことが、遙か昔のことのように思えて不思議な心地になる。
今度こそ、何があっても貴様を手離さぬ。
この俺の命が尽きる日まで、その愛らしい笑顔を守ることを天に誓おう。