第118章 青い花の秘密
「……知りたい、か」
信長は低く呟き、朱里の瞳をじっと見つめる。そこには怯えはあっても、決して折れない強い意思が宿っていて強く惹き付けられる。
「恐ろしいと思いながらも、その真実に向き合おうとするか」
「はい」
朱里は迷うことなく頷いてみせる。
「この花を巡って、多くの人が傷つき、命まで落としている。だというのに、私だけ知らぬ顔をしているわけには参りません」
信長はしばらく黙って朱里を見つめていたが、やがて小さく笑みを浮かべる。
「貴様はそういう女だったな。ならば共に見届けよ。この花に秘められた真実を」
「…はい」
朱里は大切そうに青い硝子の花を両手で包んだ。
陽の光を受けた花びらは、深い海のような青を湛え、静かに輝いている。
「とはいえ、残り六つの花の在処を示すものは今のところない。賊どもも、硝子細工というだけで闇雲に襲っているようにしか見えぬしな」
「この海図に何か隠されているのでしょうか?昨日見たところでは目印などは特にないようでしたが…」
改めて見てみるが、海図上に印が付いている箇所は見当たらない。
「賊を捕らえて情報の出所を聞き出すしかあるまい」
「捕えると言っても、いつ、どこに現れるのか分からなくては難しいのでは…?」
「分からぬなら、こちらから誘い出してやればよい」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる信長に嫌な予感がする。
「誘い出すって、まさか…」
「その、まさかだ」
信長は机の上の青い硝子の花を指先で軽く弾く。キンッと高く澄んだ音が響く。
「宗伯からの献上品が大坂から京へ運ばれるという噂を流す。珍しい青い硝子細工の花を信長が帝へ献上すると。賊どもが本当に硝子細工を狙っているなら、必ず食い付く」
「ええっ!? そんな危険な…万が一奪われてしまっては大変なことになります」
慌てて声を上げると、信長は面白そうに目を細めた。
「賊どもが硝子細工そのものを狙っているのか、それとも海図が隠されていることを知っていて狙っているのか、それを見極める必要がある。もし奴らが海図の存在を知らぬなら、花を奪った時点で満足して姿を消す。だが海図が目当てなら、それがないと知った途端に必ず動揺を見せる。その隙を突けばよい」
「では、敢えて奪わせると…?」
恐る恐る尋ねると、信長は当然のように答えた。