第26章 本能寺
その夜
しんと静まり返った夜闇の中、パチパチと炎の爆ぜる音が聞こえてくる。
木が燃えるような、きな臭い煙の臭いがどこからともなく漂ってきており、それとともに複数の人の気配を肌に感じる。
既に甲冑を着込み、傍らには太刀を携えて坐する。
目を閉じて、その時が来るのを待つ。
バンッ!
勢いよく襖が蹴破られ、忍び装束の男達が乱入してくる。
見たところ、数十人といったところか…
甲冑姿の俺を見て一瞬怯んだ様子を見せるが、すぐに俺を取り囲み、刀を向ける。
夜闇に禍々しい刃がギラリと光る。
「……寺に火をかけるとは、なんとも罰当たりな輩よ」
「……黙れ!神も仏も信じぬお前が何を言う!
…信長、覚悟っ!」
打ち下ろされる刃を太刀で受け止め、そのまま横に薙ぐ。
キンッという高い金属音が耳につく。
勢いで相手の刀が弾き飛んだところに、素早く胴を払うと、血飛沫をあげて相手が倒れた。
一瞬で倒れた仲間を見て警戒の色を滲ませた敵は、ジリジリと間合いを詰めながら刃を向けてくる。
続けざまに四方八方から斬りかかられるのを、息つく暇もなく受け止めて倒していく。
北条の忍びか…なかなか腕が立つようだが…
「御館様っ!」
駆けつけた秀吉と光秀が、俺に斬りかかる刃を横から薙ぎ払う。
「……お怪我はございませぬかっ?」
「秀吉…誰にものを言うておる?
……火は消し止めたのか?」
「はっ、大事ございませぬ!
……貴様ら、御館様に刃を向けるとは命知らずなっ。
覚悟しろっ!」
秀吉と光秀が加わって立ち回ると、徐々に敵の数も減っていき、さほどの時を要さず全ての敵を制圧した。