第22章 心の棘
「いや、他には何もない。
朝廷は官位で俺を抑えておきたいのであろうが、無駄なことだ。
官位など有り難くもなんともない。
俺は…自らの力で天下静謐を成し遂げる」
「信長様…」
力強く決意を語られる姿が頼もしく、何となく感じていた不安が薄れていく心地がする。
「……朱里、今宵は貴様を愛したい。
貴様はあの日以来、俺に愛されることに後ろめたさを感じて避けているようだが、それは無用な心配だ。
俺が情慾に溺れて政を疎かにすると本気で思っているのか?
そのような心配はいらぬ。
貴様がおらねば俺の心も身体も満たされぬ。
俺の足りぬものを埋められるのは貴様だけだ。
……諦めて大人しく俺に愛されよ、この命が尽きるまでな」
「信長様……私、怖かったのです。
私のせいで信長様が悪く言われてしまうのが…
周りが皆、自分を非難しているような気がして後ろめたくて…。
本当はずっと信長様に触れたかった…触れてほしかった。
この命尽きるまで…お傍にいても、いいですか?」