第108章 離れていても
想像の中で熱く滾った楔で奥深くを貫かれた感触に、身体がびくりと震える。
「っ…はぁ…はっ、あっ…」
お腹の奥が痛いぐらいにきゅうぅっと締め付けられた後、急速に脱力していくのを感じながら、はぁはぁと乱れた息遣いで必死に息をする。
(っ…私、イって…一人でこんなこと…)
達したばかりの身体は熱く火照っていたが、頭は急速に冷めてきていた。秘部に埋めていた己の指を慌てて引き抜くと、ぬぽんっといやらしい音がして栓が抜けた秘穴からトロリと溢れた蜜が尻を濡らす。
「やっ…あ、んっ…」
羞恥に身を捩り、布団の中で身を縮こまらせる。グッショリと濡れてしまった股の部分を隠したくて固く足を閉じた。
先程までの高揚感が嘘のように一気に気持ちが冷めていく。信長を想い、一人慰めた己の身体が途端に虚しくなってしまう。
(こんなの…やっぱり嫌。信長様に触れて欲しい…想像の中の信長様じゃ満たされない)
身体は一時の快楽に溺れて熱くなっても、心までは満たされず、かえって虚しさばかりが募っていくようだった。
もやもやと燻る胸の内を堪え忍ぶように小さく身体を丸め、朱里は一人褥の中で目を閉じた。
一方、京でも同じ頃、信長もまた眠れぬ夜を過ごしていた。
「はぁ…眠れん」
何度目か分からぬ溜め息を吐きながら、険しい表情で天井を睨む。
夜も更けたこの時刻、寺の者も皆眠りについているのか、シンっと静まり返って物音一つしない。
外はまだ雪が降り続いているのだろう。庭に面した障子の向こうからは冷え切った夜の空気が感じられた。
元々が寝付きの悪い信長だが、今宵は部屋の寒さのせいもあってか褥に入ってかなりの刻が経つというのに一向に眠気が訪れず、右に左に寝返りを打っては溜め息を吐くのを繰り返していた。
そうして寝返りを打つたびに、常ならば隣にいるはずの愛しい存在が今この場にいないことを自覚してしまい、独り寝の虚しさが一層募っていくのだった。
京へ来て数日経つが、朱里が傍にいない閨に慣れることはなく、眠れぬ夜が続いていた。
(朱里と共に眠るようになるまでは、夜なかなか眠れぬこともさして気にならなかったのだがな。独り寝の褥がこんなにも寒々しいとはな…これは冬の寒さのせいばかりとは言えまい。あやつが隣におらぬだけで身体だけでなく心まで冷え切ってしまうようだ)