第103章 旅は道連れ
ばあーっと空が明るくなって互いの顔がはっきりと見えた。
欲の色を色濃く帯びた深紅の瞳を間近に見た途端、身の奥がズクリと悩ましく疼く。
(っ…あっ……)
花火の音と人々の歓声を耳にしながらも、濃厚な口付けに溺れていく自分に戸惑う。
触れ合う唇が熱く、溢れた熱がじわじわと身体中を蝕んでいくような心地がして、堪らず口の端から淡い吐息が溢れた。
「はっ…あっ…んっ…」
(だめっ…こんなところで…人に見られちゃう…)
花火が上がるたびに明るくなる夜空に、人々の視線が気になってしまう。
「朱里っ…」
「あっ…信長さま…も、やっ…見られちゃ…う…から…んっ、もぅ、止めて下さ…い…」
「っ…はっ…構わん。皆、花火しか見ておらんわ。もう少し…寄越せ」
「んんっ!やっ…ふっ…んっ…」
後頭部を押さえられて再び深い口付けが落ちてくる。
ーちゅっ…ちゅうぅ…くちゅっ…
歯列を割って入ってきた舌に口内を嬲られ、湿った水音が溢れる。
舌先で唇の縁をなぞられて、その擽ったさに身体が甘く震えた。
口付けだけで身も心も蕩けさせられてしまい、理性という名の枷を失った私はその身を信長様の腕の中へと委ねていく。
やがて、長い口付けの後ですっかり力が抜けた身体を委ねる私に、信長様は仕上げのようにチュッと音を立ててから唇を離した。
「っ…あっ…はぁ、はぁ…」
花火はいまだ夜空を煌びやかに彩っていて、人々の興奮する声が聞こえていたけれど、私にはもう周りを気にする余裕なんて少しも残っていなかった。
「朱里…」
信長様の指先が着物の襟元に触れ、露わになった頸をするりと撫で上げる。
「んっ…」
熱く火照った身体はそれだけで敏感に反応し、あられもない声が漏れた。
「ふっ…唆られる良い声だが…続きは戻ってからだ。この着物、本当によく似合っているな。今宵の艶やかな貴様を他の者が目にしたことは甚だ不愉快だが…この着物を脱がせ、ありのままの貴様を見られるのは俺だけだ。そうであろう?」
「っ…は…い…」
(この着物も、着物の下の肌も…貴方にだけ見て欲しい。貴方以外、何もいらない。私は…貴方だけが欲しい。信長様、貴方も…同じように私を思ってくれていますか?)
あからさまな独占欲に触れて、どうしようもなく身体の熱が煽られていた。
熱くなった身を委ね、信長様の腕の中でそっと目を閉じた。