第21章 年始の会
翌朝〜
まだ夜が空けきらぬ時刻に、ふと目が覚める。
気がつくと私は褥の中で信長様の腕に抱き締められ、その逞しい胸元に顔を埋めていた。
顔を上げて見ると、信長様はまだ眠っておられるようだった。
(綺麗なお顔…睫毛が長くて、薄い唇……この唇が昨夜私を………)
昨夜の恥ずかしい行為が思い起こされて、顔に熱が集まる。
まだ気怠さが残る自分の身体を見遣ると、昨夜乱された襦袢は綺麗に直されており、信長様が着付け直して下さったようだった。
「……もう起きていたのか?まだ夜明け前だ」
まだ眠たそうな顔で言いながら、私の髪に手を伸ばし、優しく梳いてくださる。
「…信長様!ごめんなさい、起こしてしまいましたか?
ふふっ、明けましておめでとうございます」
「ああ…おめでとう。
昨夜は知らぬ間に年が明けていたな」
ニヤリと笑いながら、襦袢越しに私の身体を撫でる。
「っ、今日は朝からお忙しいのでしょう?
毎年年始は、沢山の家臣の方や各地の大名の方が新年の挨拶にお越しになる、って秀吉さんから聞きました」
「…堅苦しいのは嫌いなのだがな……まぁ、仕方がない。
……今年は貴様も俺の隣で挨拶を受けよ。
秀吉も文句は言うまい」
「あの…よいのですか?
そのような公の場に、私などが…」
これまで武将達の軍議の席などには出ることがあっても、対外的な場には同席したことはなかったし、私の立場はそういうものだと思っていた。
信長様も私を公の場に出すことを避けておられるように感じていたのだけれど…今回はなぜ…?
「大名達との場には出さぬ。家臣達との場だけならよい。尾張や岐阜からも口煩い古老どもが来るのが厄介だが…
煌びやかに着飾って、俺の隣に座っておれ。
……天下人の女としてな」